「俺・・・知らない間にそんなに日向ちゃんのこと傷つけてたんだね。
・・・・・・全然気づいてやれなくて・・・ごめん・・・」
私は首をブンブンと横に振る。
「・・・あのさ、
もう一つお願いを聞いて欲しい。日向ちゃんのお願いも、もう一つ叶えてあげるから。」
「もう一つ?」
「うん。お願いは一つに対して一つだけだろ?」
「そうだね。」
「じゃあ、聞いてもいい?」
「うん」
「なんで、このタイミングにしたの?」
「・・・
それはね、この前メール送ったでしょ?
私が断られたメール。」
「あー、うん」
「あの時、現実に戻ったの。
私たちは高校三年生で受験生。勉強しないといけない。だから、こんなことしてる場合じゃないなって。」
「じゃ、じゃあ俺のメールの返答が悪かったってこと?」
「ううん。あの返答は私にとって嬉しかった。」
「え?」
「本当の気持ちに気づけたから。あのメールのやり取りがなかったら、私たちはこのままズルズルいってたと思う。
だから、良かったよ。ありがとう」
「そっか・・・
俺の願いはそれだけ。
日向ちゃんの願いは?」
「私の願いは・・・」
もう決めてある。最後の我儘なお願いを。
「最後に・・・私を抱きしめて欲しい。」
「・・・いいよ」
「ありがとう」
これできっと最後だ。
優希は優しく私を包み込んでくれた。
「今までありがとう」
「こちらこそ・・・ありがとう。」
優希が静かに私の体から離れると、ぐっと何かがこみあげてくる。
これで最後。
もう一度ということは私たちにはない。
明日からは恋人から友達になる。
「なんか、辛いね。」
「・・・」
「日向ちゃん?」
自分から振ったのに涙が溢れ出てくる。
その涙を優希は優しく指で拭いてくれた。
「ありがとう」
「ほら、笑って!
笑顔になってくれないと俺まで泣いちゃいそうだから!!」
「うん」
最後は思いっきりの笑顔で、
私たちは終わった。
