しおりの挟んであるページを開けると、懐かしく感じる。
『ありさは 光を見つけた。
「こんな古びた屋敷にどうして光が?」』
ここまで読んだ気がする。
その先を読み進めていくと、予想もしなかった出来事が起きた。
『屋敷に入り、そのまま奥へと進み続けた。
不気味な感じがする。
暗くて寒い。本当にここに光があったか?
そう思うくらいに明るさとは無縁だった。
・・・ん?
目の前の扉の向こう側に一瞬 黒い影が私の前を横切った。
何かの動物なのか。はたまた幽霊か。
でも、きっと何かが居るに違いない。
ありさは重い古びた扉をゆっくりと押した。
すると
そこには1人の男が立っていた。』
男・・・???
私は本に食いつくようにして じーっと上から下に読んでいく。
まさかの展開に驚きが隠せないのだ。
知らぬ間に私はこの本に また興味を持ち始めてしまった。
『「どうして君がここに・・・!?」』
・・・どういうこと?
『「・・・貴方は誰?
私のこと知ってるの?」
ありさは胸に手を当て、首を傾げる。
「やはり僕の一方的な想いだったか・・・
・・・君はフラリアン村の姫だろう?」
「フラリアン村の姫?」
「ああ・・・もしかして違うのか?」
ありさは全く覚えがなかった。
確かに生まれ育った場所はフラリアン村だが、
姫などといった高い身分の者ではなく、
貧乏な家で育った者だ。
正反対と言っても過言ではない。
だが、ありさは優しい目で青年を見つめ、そっと口を開けた。
「私はフラリアン村の姫です。」
「やっぱりそうだったか!!!
やっと会えた!ずっとこの目で姫を見たかった。
僕のような身分の低い者では写真でさえ拝見することができなかった・・・!」
「ちょ・・・ちょっと よしてください!
顔を上げて・・・」
「これくらいしないと割に合わないんだ。」
ありさは黒髪の顔の整った青年に取り返しのつかない嘘をついてしまったことに気づいた。』
