神山さんと入れ替わりで、次は荒木さんがバッターボックス立った。
フォームは綺麗だし、全く怖がることないスイング。
まさに完璧だ!
「何それ、なの 野球得意だったの?」
「うんっ・・・まぁね!」
スイングをしながらでも神山さん話す。
すごいな・・・。
「へぇーっ」
対して、神山さんは全く興味がなさそうな返事をする。自分から聞いといて、それはないよ って思ってしまった。
「私はこの辺にして・・・
さぁ、次は吉木さんの番よ」
荒木さんが私にバットとヘルメットを渡してきた。
「で、できるかな・・・」
野球はたまに見たりするけど、実際にやったことは1度もない。
そんな私が、今やっと初めて友達ができようとしてる中
やっても大丈夫なのか?
ここで下手だとバレて
「つまんない」って言われて、嫌われたりしないよね?
そんな思いでバッターボックスに立った。
「頑張れ!」
「頑張って!」
背中で声援を受け、
そのまま体にエネルギーを流し込んだ。
第1球。
思い切って振った。
だけど、ボールは私の足元に転がり落ちた。
あーあ。
途端に後ろからボソボソ聞こえ始める。
最悪だ。嫌われた。
落ち込んだまま2球目を振った。
また、空振り。
バットを降る度に視界が揺れる。
もう何も見えないところまで達した時、
私は後ろを振り返った。
「もう、やめるね!」
えっ・・・?
あの2人の姿はない。
どうして・・・?
私は裏切られちゃったの?
やっぱり、私が下手だったから?
そんなのひどい。
色んなことが頭の中を駆け巡る。
「いやーっ!」
私は手を持っていたバットを投げた。
バタンと大きな音が耳に届いて、やっと自分がしたことに気がついた。
こんな人に迷惑かけることしちゃダメ。
