「ふぁぁ〜、ねみぃ」




隣からぽつりと聞こえる、いかにも眠そうな声。




「優希 昨日何時に寝たの?」



クラスの男子がそう聞くと優希は、あたり前かのように

「2時」


と答えた。




「遅くね??」



塩見くんが驚いた表情で発言すると優希は首をブンブンと振った。




「普通 普通」



「はいはい、でたでた!

優希の自慢(小学生並みのな!)」



「ちげーわ」





そういえば、小学生時代は前の日の夜に遅く寝た方が勝ちみたいな話とかあったよなぁ。



しみじみと思い出しながら、ペンを走らせる。






今日の1時限目は数学だ。



数学の先生は勉強のこと以外は基本的には話さなくて「陰キャ先生」と呼ばれている。




「先生、見えないので少しどいてもらえますか?」



気の強いクラスの女子がキレ気味で言った。




「あっ、すまない」



教室の隅に立っている先生を見ると今までの私を思い出してしまった。




可哀想・・・





「日向ちゃん」



「ん?」



「ここ、教えてくれない?」




優希が数学中に珍しく声をかけてきた。


いつも話しかけてくれるのは理科の時間ぐらいしかない。





「えっ、うん。

いいけど」



「どうしたの?今日の日向ちゃん元気ないよ?」



「そう・・・かな?」



「うん。


何かあったら言ってね?」



「ありがとう」





「あーうん」と照れながら言う優希は、なんとなく可愛かった。










「じゃあ、1時限目は終了。
号令お願い」



「起立

気をつけ



礼」



『ありがとうございました』






次は物理か・・・
やだなぁ。




「みんな〜!物理、移動だってよ」



「嘘じゃん〜」



「めんど」





「つばさちゃん、一緒に行こ」


「うん!」