別に先手必須!みたいな
縦社会の会社ではないけれど。
"なんでも最初が肝心"と
いつもハルくんが言う言葉を
思い出して、軽く落胆する。
「こちらこそ。所長の
東谷夏樹(アズマヤ ナツキ)です。
今日から宜しくね。」
所長は、ちょっと
緊張気味の私をちらりと見る。
ふふっと笑いながら、長身の身体の前で
私に向かって謝罪の意で手を合わせる。
「ごめんね!
扉の前で緊張してたから、
後ろで待ってたんだけど
逆にびっくりさせたね、ごめんね〜。」
なんて、気さくに声を掛けてくれる。
(こ、この人…
面接のときと、全然印象がちがう…)
所長の声を聞いてか、
中から事務員のお姉さん達が
わらわらと出てきた。


