この声が聞こえるまで

当時、友達の少なかった私は幼い頃から巫女の稽古や叔父から剣術を習う時以外は吏人と居る事が多かった。

彼は兄の使い魔だったが、拘束や制限がなく自由に行動することができた為いつも探検と称して山や川に行ったり、時には誰にも相談できないことも彼になら相談できた。

けど、あの日以来…例の事があってから会うのが気まずくなり兄と共に吏人も避けるようになった。

「結、久しぶりだな。」

そう言いながら頭を撫でる手はあの日から何も変わって居なく大きくて優しかった。

抑え込む怒りとは裏腹に懐かしさが蘇り不思議な感情に胸を支配される。

これ以上此処に居ては行けないと本能が叫ぶが足が言うことを聞いてくれない。