この声が聞こえるまで

"兄は優秀なのにどうして貴方はそんなに鈍臭いの？"

"結ちゃんのお兄さんって優しくてカッコイイよね"

"貴方はこの家の恥よ"

もうそんな言葉は聞き飽きてしまった。

いつからだろうか、気がつけば兄を避けて生活するようになっていた。

初めから比べられていた訳じゃない。

けど年齢と共に兄との差は広がっていく一方でどんなに努力をしても追いつく事が出来なくなっていった。

母や、家族のみんなも最初は厳しくしていたが私に何か望む事を諦めたのか期待する事は徐々になくなった。

だから私も学校での出来事や日頃の話をする事も必要最低限にしかしない。

母が私を心配するのは私が心配だからではない。

私に何かあれば、家の名に傷がつくからであって本心は違う。