この声が聞こえるまで

家に着くと母が慌てて私に駆け寄ってきた。

そう言えばあそこの空間とこちらの空間では時間の進み方が違う事を忘れていた。

「結、怪我はない?また何かあったのね。」

「大丈夫だよ。」

"大丈夫"この言葉は本当に便利だよね。

大丈夫じゃなくても相手に安心感を与える事ができるだから。

母と少し話した後、長い廊下を進み離れにある自分の部屋へと向かう。

「結、また彼奴を呼び出したのか?」

私に話しかけて来たのは少し歳の離れた兄の侑(あつむ)だった。

「私がいつ使い魔を呼び出そうと兄さんには関係ないでしょ。」

私は何でも完璧にこなせる兄が嫌いだ。

いつも勉強も運動も比べられてきた。