まずは村中を駆け回った。
いつも通るあぜ道、苔の生えたお地蔵様の裏、立ち入ってはいけないと言われる裏山。
どこを探し回ってもそれらしきものはなかった。
唯一見つけたのは、裏山の大岩の上に生えていた綺麗なユリだった。
探し求めている花とは違ったけれど、綺麗だったから少年にあげることにして、少女は村で花を探すのを諦めた。
-見て、ユリだよ。綺麗でしょう
少年にユリを見せると嬉しそうに手にとった。
そしてそのまま少女の髪に挿す。
-こっちの方が綺麗
少年の言葉に少女は真っ赤になって俯く。
そしてクスクス笑う少年見て強く思う。
-絶対に花を見つけるんだ

