〜2〜

差し出された紅茶をすする。
爽やかな香りが鼻をくすぐり、一口飲むと渋くてとても甘い。輝くような紅色はルビーのようだった。

「まず最初に着目したのは荷物と召されている服です。
荷物はブラックのキャリーケースと革でできているであろう年代物の黒の鞄。スーツを召されていて疲れ切った表情。
キャリーケースを持っているなんて日常ではほぼありませんから、どこか遠くに泊まりに行っていたことは容易に想像できました。
泊りがけなのにスーツなど普通に考えてありえないので、出張に行っていたのではとも思いました。
飛行機や船でファーストクラスに乗っていたと言うことも考えましたがその鞄が年代物で壊れかけていたのでそれはないだろうとも。
これらのことから会社の重要役職、または医療関係者、弁護士や警察官などではないかと。」

「これだけでそこまでたどり着くとは…普通に吃驚しましたよ」

「有難う御座います。
次にご友人がこちらにいらしていたと言うことを聞きました。
念のため1ヶ月ほど前までの記憶を遡り、いらっしゃった方の中で友人の話をしていた方を探したところ、2人ほど見つけました。
1人目の方のご友人はヘアスタイリスト、2人目の方のご友人は検察官でしたね。
そして、マスターを見つけた時の視線の移し方が注意深かったので検察官の方ではないかと。
まぁ、確信が持てませんでしたから仕草や指先を見ておりましたが少し仕草が固く、指先には皮の剥けかけたペンだこがありますでしょう?それに、表情が分かりにくいこともあります。これで確信が持てたのですよ。」

「ご明察、恐れ入ります。僕は確かに検察官ですよ。」

「あ、1つおまけを忘れておりました。ずっと机で作業をしていて、つい最近異動したのではと考えております。理由は先ほどのペンだこと椅子の座り方と話し方ですが…合っていますでしょうか?」

「それもわかってしまうのですね…流石です」

「合っていたのですね、少し安心しましたよ…」

話に夢中になり、とっくに冷めていた紅茶は渋みが少し増していたが甘さも香りも増していて美味しかった。


「ありがとうございました、またお越しくださいね」

僕は今日、この店の常連になった。
いつも持っていくのは疲れと謎と200円。
持って帰ってくるのは清々しさと説かれた謎と満足感。

さて、今日はどんな謎を持って行こうか。