「古文の宿題に追われる涼は、いとをかし」
「いや全然興味深くないから」
「いやいや、veryいとをかし」
「なんだそれ。英古文?」

ある夏休みの日。

「…あ」
彩が急に立ち上がった。
「呼んでる、行かないと。ごめん、古文自力で頑張って、今日は一日無理そう」
「僕の古文の点数知ってるよな?」
「ばいちゃ」
ドタドタと行ってしまった。

全くあいつは…………。
彼女は時々、「言葉に呼ばれた」と言ってどこかに行く。どこに行っているのかは誰も知らない。
「新しいうたでも思いついたのかな」
誰にともなく呟いた。
彼女の行き先、知って見たいような、知ってはいけないような。
甘くて苦い味がした。