「じゃあ俺、来れそうなヤツに声かけてくるわ」

中原君は笑顔で言うと教室の方へと去っていった。


それに続いて成実ちゃんも歩こうとしたが、紘子ちゃんが手を掴んで引き留めた。


「ちょっと待って。成実はどうしたいのよ?これで良いの?」

「え?」

成実ちゃんは何が?と不思議そうな表情を浮かべている。


「須藤君と付き合いたいの?」

最近ようやく覚えたが、『須藤』はアツヒロ君の名字だ。


「そりゃもちろん!」

成実ちゃんは力強く答える。

「じゃあ二人で行きなよ」

「でも、それは、緊張しちゃう……」

「じゃあ誰か違う子に取られても良いんだ?」

「えっ!それはイヤ!」

「じゃあ行きなよ」

「でも…間が持たなくなりそうだし……」

「じゃあ好きって思うだけで傍観してなさい」

「でも一緒に居たいし……」


また先程のような堂々巡りの状態に、私は二人の間で再びオロオロし始める。


「二人きりは嫌だけど、誰にも取られたくないっておかしくない?」

「……」