その時、突然左肩をツンツンつつかれている感触がして、私は反射的に勢いよく後ろに振り返る。


「西野さん、意外とやるね」


まともに話をしたこともなかった後ろの席の目がぱっちりした美人な女の子が、コッソリと私にそう言って耳打ちした後、ニヤリと笑って見せた。


「わ、私達はアヤシイ関係じゃないよっ!」

私は変に誤解されると彼に悪いと思い、否定しながらブンブンと音がなるくらい大きく首と手を振って答える。


「あははっ!凄い動き!それにアヤシイって何?西野さんって面白いこと言うね!」

軽く笑わった彼女は、すぐにまたコッソリと私に耳打ちする。


「端的に言うと、楠木さんに西野さんは性悪で男たらし、さらには真っ黒い噂まであるから近付かない方が良いって言われたんだけど、どうなの?」

「……………………………」


耳打ちされて聞こえてきた内容が、あまりにもぶっ飛んでいて呆れて声も出せず、彼女の顔を見ながらこれ以上開かないぞってくらい目を見開き、口も大きく開いてしまった私。

開いた口が塞がらないってこういうことを言うんだな。