「良いのかな、勝手に持ってっても……」

「私が考えた位なんだから中原君のファンが捕ってくかもよ?それにきっと中原君も瑞季に何か持ってて欲しいと思う」

「……うん、じゃあ……」


筆箱を覗くと、懐かしい薄いエメラルド色のシャーペンが目に入った。

これ…あの時、一緒に勉強した時のシャーペンだ。


「これにする……」


中原君との想い出が詰まっている。




家に帰り、一人きりになると枯れたと思った涙がまた流れた。

夜、バイトがあるのを思い出して店長に電話を掛けたついでに辞めたいと伝えた。

暫くはバイトをまともに出来るとは思えなかったから。




お通夜。

中原君の遺品が机に並べられ、置いてあった財布の中に私と撮ったプリクラが入っているのを成実が見つけた。

私はそれを見た瞬間、涙が溢れそうになったが何とか堪えた。

棺で寝ている彼は事故のせいで別人のような顔だった。

人前で泣くことに慣れていない私はそれ以降も泣くまいと耐えていた。

隣で香織が私の代わりにいっぱい泣いていた。

彼女も中原君のことが本当に好きだったのだろう。

外に出ると雪が降っていた。

今季初めての雪だった。

そういえば朝は凍えるほど寒かったことを思い出した。




次の日のお葬式。

皆泣いていた。

私は涙を堪えていた。

最後に棺に花を入れるのを私は拒んだ。

入れてしまったら、本当に終わってしまうから。

お葬式の最後、中原君のお母さんが彼の名前を呼び続けて泣き叫んでいた。

皆もらい泣きをしていた。

家に帰ってもご飯もろくに喉を通らなかった。