ガシッ！



突然、左腕を行きたかった反対側の後ろに引っ張られた。


それに驚いて振り返るとアツヒロ君。

私の腕にはアツヒロ君の手。


アツヒロ君に腕を掴まれた。



「何、考えてんだっ！お前は俺と違って、バカじゃないだろ！？」


アツヒロ君は俯いていて表情は見えない。

彼の怒鳴るような声と、私の腕を掴んでいる震える手。


「辛いのは、お前だけじゃない……」


そう言って顔を上げたアツヒロ君の頬は沢山の涙が伝っていた。

表情は苦しそうに歪んでいる。


アツヒロ君の表情と言葉に、自分が物凄く馬鹿げたことをしようとした事に気付いた。


「ごめん……アツヒロ君……」


私の頬にもまた涙が伝った。



そうだね……。

苦しいのは、私だけじゃ無い……。



「だから俺が肝心な事ちゃんと言えってお前らに教えたのに……。智也も西野もお互い話し掛けたいくせに、自分からは全然動かねぇし……。それなのに余計なことはするななんて言いやがって……」


アツヒロ君は愚痴を溢すように話していた。

私と中原君をずっと見ていたのか、苛々が募ってたのだろう。