「お前ら、バカだよ……」

アツヒロ君の目にはうっすら涙が浮かんでいる。


「嘘、でしょ……?」

私は呆然とするしかない。


「本当だよ……。たしか…瑞季の、誕生日の、ちょっと前……。だから、瑞季を、おちょくるの…やめて……」


その言葉に記憶を呼び起こす。

確かにその辺りで成実が突然私達のことを弄らなくなって不思議に思った。


「こんなことに、なるならっ、強引に、くっつければ、良かったっ!もっと、口うるさく、言えば、良かったっ!」


成実は泣き続けている。

そんな成実の背中をアツヒロ君が宥めるように擦る。


「いつ…から……わたし、の…こと……」

「わかんない……。けど…私、聞かれた……。まだ、仲良く、なる前、一人でいた、瑞季のこと……。突然、知らない、番号、かかってきてっ、中原君で。良い子っ、だから、瑞季と、仲良くして、くれってっ」


もしかして…あの時……


香織のことがあって二人でサボった。

あの時、私は自分の力で成実と仲良くなれたと思っていた。


でも本当は中原君のお蔭だったの……?


「違う。入学式」

アツヒロ君が突然言った。


「え?」

「可愛い子がいたから、思わず声掛けたって。自分から初めて女子に声掛けたって言ってた」


初めから……?


私は何であんなに臆病になっていたの……?