なのに周りには誰も居ない。


目の前を遮るものは何も無い。


誰も居ない。


中原君以外は。


懐かしい瞳がこちらを見ていた。


中原君が私を見ていた。


距離は五メートルほど。


自然と速まる鼓動。


久々に中原君の顔を真っ正面から見た。


彼の表情は無表情だけれど。


何を、考えているの……?


私は……


話、掛けたい。


今このチャンスを逃したら臆病な私は結局声を掛けることも出来ずに冬休みを迎えるかもしれない。


自分を奮い立たせ、私は五ヶ月ぶりに彼の名前を声に出そうとした。




「瑞季!」