一期一会

「いらないなら良いよ……」

今更だが気まずくなって、手を引っ込めようとしたら、その手を掴まれた。


「!」


手を掴まれた事に驚いた瞬間、フォークにパクッとかぶりついたアツヒロ君。


その行動に私は固まる。


「……甘い」

そう言ってアツヒロ君は私を見上げて呟くと、掴んでいた私の手を離してコーラを飲んだ。


突然、純粋な乙女の手を握るなんて、何すんのよっ!

アンタは女に慣れているかもしれないけど、私は初心者なんだから突然そんなことしないでよねっ!


はっ!

今気付いてしまった事がある。


私はフォークを持っている右手を凝視する。


このまま食べたらアツヒロ君と間接チューじゃんっ!!


私は置いてあったナプキンを取ると然り気無く拭いた。


「お前、酷いな!」


どうやらアツヒロ君は見ていたらしい。
が、私は気にせずに拭き続ける。


「おバカ菌移りそうだもん」

私は思い切り不快な顔をして言う。

「うつんねーよ!」

アツヒロ君が言い返してきた。

「移る!」

「そもそもおバカ菌って何だよ!」

「アンタ持ってそうじゃん!」

「トイレ行ってくる!」

するとアツヒロ君は声を荒げて立ち上がり、部屋から出ていった。


「何なの、アイツ」

「手の掛かる年頃なのよ」

私の呟きに成実が返した。