一期一会

「瑞季の事が好きだったりして!」

香織が大声で突然言った。
その声は誰も居ない廊下に響き渡った。


「……やめてよ、悪い冗談は」

私は真顔で返した。

あんなチャラ男は丁重にお断りだから。


「しっかし、この前の体育祭は笑えたわ」

紘子が呟く。

「見事なズッコケだったよね!私、笑っちゃったもん!」

思い出し笑いをする成実。

「確かに!」
「アレは笑えた!」

と香織と小野田さんも笑っている。


「そうかな、私は頑張ってたと思うけど」

「「「「え」」」」


皆が私の言葉に目を丸くする。


「コケちゃったけど二人抜いてたし、惜しかったよ」

「……まぁ、コケなければーーーー」

「お前ら声デカすぎ。教室まで聞こえてる」


成実が言い切る前に被さってきたのは、アツヒロ君の声。

どうやら廊下を歩いていた私達の声は、教室に居たアツヒロ君本人にも丸聞こえだったらしい。


どこから聞いていたのだろう。
私の事が好きだというくだりを聞いていたら、気まずいな……。


私達は無言で教室に戻る。


だが私の心配を余所に、アツヒロ君は先程と変わらない態度で質問してくる。


私はそんなアツヒロ君に、気まずさなどすぐに忘れていた。