「じゃあ九時に電話する」

「え!!?」

「違う時間が良い?」

「いや…そういうわけではなく……」

「じゃ九時な。電話の前で待ってて」

「う、うん……」

彼は私が頷くと、何事も無かったように本に視線を戻した。


私の頭は大混乱。

その後、私は冷静に画集を眺めることなんて一切出来なかった。




そして約束の夜九時前。

私はお風呂も済ませ、後は寝るだけの状態。
子機を部屋に持ち込んで、ベッドの上で電話の前に正座をして待ち構える。

九時ちょうどにコール音が室内に鳴り響く。

戦闘態勢万全な状態で待ち構えていた私は、一コール目が鳴り止む前に通話ボタンを押した。


「はい、もしもし。西野です」

『出るの、速』


やっぱり中原君だった。


『本当に電話の前で待ってたんだな』

受話器からの声は笑っているようだ。

「中原君がそう言ったんじゃん……」

照れを隠すように少し拗ねて答える。

『そうだな。待っててくれてありがと』