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仕事が終わり、今私と漣はリビングのテーブルの前で向き合って座っている。
そして、その体制で沈黙のまま、すでに10分が過ぎていた。

私が帰ってきて直ぐ、漣に話があると言ったら聞く体制を作ってくれた。
そのまま、私の言葉を待ってくれている。

私はふぅーっとひと息ついてから話し始めた。


「漣…。
私ね、漣が浮気してるとか、私の事嫌いなんじゃないかとか考えるだけで不安になる。
私は漣の事が好き。
だけど、漣は他の人の所に行くんじゃないかって…
別れ話をしたいんじゃないかとか考えちゃう…。」


私がそこまで一気に言うと、漣がちょっと待って…と止めてきた。


「彩子ちゃんは、幼馴染の事が好きなんじゃないの…?」


それは…
漣が浮気してると思った時に咄嗟に言った言葉だった。


「そんなの嘘に決まってるじゃん。
漣が有坂さんのことを好きで、私との別れを切り出しずらいのかと思ったから…」


それは、漣に幸せになって欲しいと思って出た言葉だった。
出来るなら、私が幸せにしたい。
だけど、漣が好きなのは私じゃなくて有坂さんなら、私が幸せにすることはできないから…
そう思っていたのに。


「彩子ちゃん、誤解してるよ。
有坂さんの事は好きでもなんでもない。
ただ、僕が頼み事をしていただけで…
本当は明日言おうと思ってたんだけど…


け、結婚指輪を…頼んでたんだ…。
彩子ちゃんと僕の…

有坂さんの実家がジュエリーショップだから…」


恥ずかしそうに…でも、真剣に漣が言った。

結婚指輪…?

私と漣の…?

じゃあ、浮気は私の勘違い…?