「どうされました?」


とうとう、しゃがみこんで止まらない涙を流していると、後ろから声をかけられた。


「な、なんでも、ないです。」


振り向き気味にそう答えた。


「えっ?彩子?」


どうして名前を知ってるの…?
名前を呼ばれて、しっかり顔を上げる。
涙であまり前が見えない。
手の甲で拭ってみると、そこに居たのは幼なじみの影山 遥人(かげやま はると)だった。


「は、遥人?ど、うしてここに…?」


こんな偶然に会うなんて…
だって、実家は別の県だから、実家からだいぶ離れてるここで会うなんて、普通じゃない。


「彩子こそ…。俺は出張で来ただけなんだけど…
ってか、なんで泣いてんだ?」


そりゃ、久しぶりに会ったのに、初めから泣いてたら気になるよね。
遥人に会って、止まらなかった涙がいつの間にか止まっていた。
さっきまでは悲しかったのに、今度は漣が追いかけてきてくれなかった事とか、隠れて連絡していた事に対してイライラしてきた。


「遥人!このあと暇?
暇だよね!付き合って!」


私は、遥人が断る暇がないくらいな勢いで、そう言った。