***


「丸山彩子さん!!僕と付き合ってください。」


そう、目の前の男に頭を下げられた。
しかも、この男は同じ部署で仕事も出来て優しいと社内で人気者の山本漣だ。

そんな人が、なぜ私なんかに…
たいして、可愛くも無く、何も取り柄のない私と付き合いたいなんて…


「人違いじゃ…」


絶対にそうだと思い、そう口に出してみる。
“あ、すいません、間違えました。”そう言われると思ったのに、返ってきた返事は想像していたものと全然ちがった。


「人違いだなんてっ…!!
僕がこんなに大好きな丸山さんを、他の人と間違える訳ないじゃないですか!!」


どうやら、人違いではないらしい…。
私が引くくらい勢いよく、そう言ってきた。

こんな完璧な人が私を好きと言ってくれて、付き合って欲しいと言われて、私にはもったいないくらいだ。
別に断る理由はないけど、こんな人気者と付き合っていると周りに知られた日には、山本漣を好きな人達から何をされるか分からない。


「ありがとう。でも、ごめんなさい。」


付き合った後の事を考えると、私には耐えられない…
だから、断ったのに…


「ど、どうしてですか!!
僕はこんなに好きなのに…あなたと付き合えないなんて想像したことも無かったのに…!」


山本漣は、今にも泣きだしそうな顔で、必死にそう言った。
まさか、そんな必死になるとは思ってもみなくて、びっくりする。


「だって、あんたの事好きな人に知られたら、何されるかわかんないし…」


私がそう言うと、即答で…


「そんなの、守るに決まってます!!」


と自信をもって言われた。


はぁ…
こうなると、私が“うん。”と言うまで、諦めそうにない。
だから、私は…


『付き合っていることは絶対に秘密にすること!』


この条件を出して、付き合うことにした。


***