桃に取って異国の戦争並みに理解不能な世界の事だったが…

くっついた離れたと言っては舞い上がったり涙を流す愛子は女らしく見えて、喜怒哀楽を共有する事が面倒くさいと思う事もあったが、少し桃の楽しみだった。

「愛子はさ、私よりずっと可愛いし、けんちゃんじゃなくても、もっといい男いっぱい寄って来るって」

それしか言えなかったが、それが桃の本音だった。

(でもこれに近い言葉、今まで何回言ったっけ?)

その日友達の中では、もうそんなクズオは棄てれ。という話でまとまった。

しかし、放課後いつもの様に桃が部活に向かうと、裏門にけんちゃんがバイクを止めている。

おせっかいかな…とも思ったが、急に正義感と使命感に桃は背中を押された。

必死な顔で小走りする桃を見て、けんちゃんは驚いた顔で立ち尽くしている。

けんちゃんの前に来ると桃は、弾む息を抑えながら言った。

「ねえ、愛子と喧嘩したんだって?」

もう知ってんのかよと言わんばかりに、「ちっ」と舌打ちしてけんは下を向いた。

「愛子を傷付けた分、ずっと一緒にいてあげなさいよ」

けんは答えない。桃は珍しくイライラしてきた。

「その子と愛子、どっちが好きなのよ」

「ぃや、どっちつっても…」

頭を掻いている。

(卑怯者ー!)

桃は唇を噛んだ