その日も、空は快晴だった。

きれいな鳥のさえずりが聞こえ、夏の青々とした木の葉が揺れていた。

タツミの自転車はゆっくりと、学校の方向へ続く坂を下り始めた。

タツミとけんの高校は、またその先にある。

澄んだ空気の中を、光を帯びた風が優しく二人を撫でた。

その風の中に一瞬、おばちゃんが溶け込んでる気がした。


「なぁモモ」

「なに?」

「俺ホントは入院してすぐからモモを見てたんだ。一目惚れって言うか」

「はは!ストーカーっぽーい」

「ずっと話しかけたくて、思い切って窓開けたけど、声、かけれなかった」

「だからモモが部屋に来た時、嬉しいって事より、正直驚いた」

「ほら、いい子にしてると、枕元にプレゼントが来るんだよ?」

「ぶはは!サンタか!」

「届けてくれたのはサンタじゃなくっておばちゃんだけど」

「季節も春だったけどな」

「おばちゃん…」

「サンタか…」