(おばちゃんは旦那さんと二人で天国に行ったのか…)

桃はいつか自分が死んでしまう事やタツミが死んでしまう事を想像しただけでつらくて、また手のひらで涙を拭った。

次の土曜日に病院に行くと、タツミは嬉しそうな顔で桃を待っていた。

いそいそとカーテンを閉めるタツミに桃は少しムッとした。

(そんなにキスだけがしたい訳?)

「モモに2つニュースがあるよ」
タツミは落ち着いた様子で言った。

「一つは俺、来週退院する事になった」

桃は顔を輝かせた。

「えー?やったぁ嬉しいよー!」

桃は思い切ってタツミに抱きついた。

タツミは照れくさそうな顔でじっとしている。

「もう一つは、守屋さんの事だよ」

桃は不思議そうにタツミの顔を見つめた。

「俺、守屋さんを知ってる。ってか、恩人だ」

生きてた頃のおばちゃんを見た事がなかった桃はタツミの話に聞き入った。

「名前を昔、母さんが言ってたの思い出したんだ。
俺が小さい頃入院してた時、可愛がってくれた看護婦さんだ。
俺が家に帰りたいって泣いてる夜に抱いててくれた。
発作が続いて眠れない夜はずっと付いててくれた。
母さんは昼間付いてても夜は帰るだろ?だから夜は守屋さんが、母さんみたいだったんだ。
モモに聞いて少し、俺思い出したんだよ」