部活が終わると桃は、決心した様に自転車に乗った。

(おばちゃんと、もっとしっかり話さなくちゃいけなかった)

桃が坂道を下って行くと、またおばちゃんはY字路で笑って待っていた。

なぜかいつもより少し嬉しそうだった。

「おばちゃーん!」

ギーッ。

桃は自転車を止めると、

「私おばちゃんに言わなきゃいけない事がたくさんあって…」

桃は必死な顔で自転車を立てると、おばちゃんに向き合った。

「どしたのー?急に」

桃の様子を見て、一層にこにこしておばちゃんは言った。

「ずっと言いそびれてたけど、私とタツミを引き合わせてくれてどうもありがとう」

桃は中途半端にぺこっと頭を下げた。

「ははー。いいのよー!」

おばちゃんはまた手をひらひらさせている。

「それからおばちゃんの旦那さんが大変な時に、私浮かれてばっかりでごめんなさい」

今度はもっと深く頭を下げた。

おばちゃんはそれを見て、落ち着いた顔をして言った。

「おばちゃんはね、あんたが自分の子供みたいに思えて、可愛かったんだよ。だからあんたが喜んでるのを見て、嫌だと思った事なんて一度もなかったよ」

「それからおばちゃんもあんたに、言わなきゃいけない事があるんだよ」

また少し笑って話しを続けた。