よく見ると彼は女の子の様に細くてきゃしゃな体をしていた。

「その病気っていつか治るの?」

初対面で聞きすぎかな。とは思いつつ、ついきいてしまった。

「大人になれば幾分良くなるみたいだよ。でも薬は一生手放せないかな?」

彼は少し寂しそうに笑った。

桃は急にハッとして時計を見ると、慌てて
「もう行かなくちゃ」
と言った。

彼は寂しそうな顔で
「また、来てくれる?」
と言った。

桃は驚いた。今までもう逢えなくなるかもしれないと怯えているのは自分だけだと思っていたのに、彼もそう思ってた事が信じられなかった。

「うん、また絶対来る」

(悲しませたくない)
そう思って必死に目を見て言った。

少し安心した顔の彼を残して病室を出ようとすると、真ん中のベッドのおじちゃんが興味津々で桃をジーッと見ている。

軽く会釈して病室を出ると中から、
「おぃたっちゃんあの子よく前通る子だろ?彼女か?いつの間にナンパしてんだ」

病室中から集中砲火を浴びてる声が聞こえた。

「ぷっ」

桃は吹き出した。

今にも廊下をスキップしたい気持ちだった。

(わーい!そうだよー私が彼女になるもんねー)

ナースステーション前の長いすに座っていたおばちゃんは、桃を見るとニタニタした。

「ほら、上手くいったろ?」