次の朝、桃は緊張して早く目が覚めた。

両親がまだ目を覚ます前に、こっそり古びた鏡の前に座った。

丁寧に髪をとかしてゴムをくわえると、一生懸命高いポニーテールを作る。

長い毛先をそのままたらして、後れ毛を出してみる。

仕上げに少しだけ、ピンクのグロスを付けた。

「ま、やりすぎも重いし…」

( 愛子みたいに化粧の似合う女になりたいな)と思いつつ、手持ち無沙汰な桃は、両親の枕元をそっと歩いて下の台所へ降りた。

開店の準備をしていると、起きてきた母が目を丸くしていた。

「桃どうしたの?こんな早くに」


開店前に愛子に報告した。

(愛子!今日彼に逢いに行くの。メチャどきどきするー(∋o∈))

送信すると、(キャーおめでとー(≧∇≦)幸せになれよー)

桃はクスッと笑って、それは気が早いだろっ。と返信に突っ込みを入れた。

外に暖簾を出すと、そこはいつもの排気ガスと土埃にまみれたバイパスだった。

でも今日はなぜか、桃には眩しく見えた。