次の日の朝、少年は窓の所にいなかった。

桃はあのおばちゃんがいらない事言ったんじゃないかとか、彼は退院してしまったのか?とか、最悪のケースばかり考えて急に泣いてしまった。

泣いた顔で教室に入ると、愛子が心配そうに桃を覗き込んだ。

「桃どうしたの何があったの?」

桃は何も言えず、またポロポロ涙を落として首を振った。

「桃。最近桃変だよ。教えてよ。友達でしょ?」

桃は何だか、愛子がいつも彼氏の事で急に泣いたり喜んだり、目まぐるしい理由が分かる気がした。

自分は話さえした事ない人に、こんな気持ちになってるのだから。


愛子はゆっくり桃の話を聞いてくれた。

「とりあえずそのおばちゃんに頼ってみてさ、駄目ならやっぱ窓に向かって話しかけな。メアド書いた紙投げつけるとか?」

「からかわないでよ」

「からかいたくもなるよ。だってこんな桃初めて見たし」

「やっぱバカにしてる」
桃が口を尖らせて言うと、

「あはは!むしろ応援してんだよ?」

「んーありがと」
桃は無理やり笑ってみた。

「私もそいつの顔見てみたいなー学校どこ行ってんだろ?あっ、でも横取りなんてしないよ。私にはもっとカッコいいけんがいるし」

桃はぷっと吹き出してから顔をくしゃっとさせて言った。
「ごっそうさん」