泪色のキセキ


懐かしい夢を見たせいか、頬に伝う涙の冷たさで目が覚めた。

「玲!お父さん!玲が目を覚ました!!」

目を開けると目の前に白い天井。

そして同時に女の人の声が聞こえた。

最初に私の目に映ったのは、知らない女の人だった。

…誰?

ここどこ?

私どうしたの?

疑問ばかりが浮かんでくる。

「玲、どこか痛いとこないか?今、先生がくるからな」

今度は知らない男の人が優しい顔で私の顔を覗き込む。

誰だろう…この人たち。

ってか、真は?子供たちは…居ないのかな?

寝てる体勢から体を起こすと気づいた。

今、私がいる場所が病院だと。

そう言えば…トラックにぶつかったんだった。

生きてたんだ私。

悪運強いな…

「七瀬さん。気分はどうですか?」

ボーとする中、白衣を着た中年の男の人が私の横に来る。

多分この病院の先生だろう。

「特に…どこも痛くありません」

キセキだ。

確かに真正面にトラックが突っ込んできたのにどこも痛くないなんて。

「若い七瀬さんがかすり傷だけで済んで幸いでした」

申し訳なさそうに先生は言った。

なんだか嫌な予感がした。

私が助かったならあの子もきっと助かってるはずなのに。

「先生…あの子は無事ですか?」

「あぁ…大丈夫ですよ」

先生の答えは気持ちがこもってなかった。

マニュアルをそのまま言葉にしているような事務的な答えに聞こえた。

「検査の結果、異常はありませんので明日には退院できますよ」

「ありがとうございます」

女の人は頬に涙を伝わせてくしゃりと笑った。