冷たい北風を抗う様に体を丸めマフラーを口元まで持ってくる。

「真、もう帰ってきちゃうかな…」

旦那より先に帰っていたいと思う私は信号待ちがとても長く思える。

寒さと焦りに耐えながら信号が変わるのを待っていると、スマホを操作しながら女の子が私の横を通り過ぎる。

「え…?」

女の子と交互に信号を見るがまだ赤色のままだ。

車の有無を左右で確認すると右からトラックが来ているのに気づいた。

「ねぇ!信号赤だよ!危ないよ!」

聞こえるように声を張って女の子に話しかけるがイヤホンをしているようで気づいてもらえない。

「ちょっと…」

目の前で人が轢かれるのなんて見たくない。

助けなきゃって一心で女の子の背中を追った。

「あ、危ない!!」

女の子に追いついた所で横目にトラックのライトが眩しく私たちを照らした。

間に合うか分からない距離だったけど、私の手が女の子の背中を押せた感覚を残して私の意識が飛んだ。