泪色のキセキ


「そっか…玲は霧島さんに虐められてたんだ。今は記憶がないから何とも思えないけど、記憶が戻ったら辛いんだろうな…だけど今の玲は今の玲で昔は知らない。これから記憶が戻るまで、今の玲がやりたい事をやっておこうと思う。ちょっと前まで地味で大人しい玲だったかもしれないけど今は違う。だから霧島さんもそこは割り切ってくれるとありがたいんだけど…」

睨みを利かせながら私の話を聞いてくれる霧島さん。

「あ。別にもう虐めないでって言ってるわけじゃないから。やるならやられる覚悟をもってやってくれれば。今の玲はやられたらやり返す人格なんで。」

挑発的に早口で言い切ると遠くから霧島さんを呼ぶ声が聞こえた。

「夏希~!お昼終わっちゃうよ!こんなとこで何してんのよ~」

同じクラスの女の子だ。

名前はまだ覚えてないけど。

「分かった。今行く!」

霧島さんは声を上げて呼びに来た子に返事をすると

「私の本性、バラさないでよ!」

借りを作って走り去った。

「…高校生ってめんどくさいな。まぁ、そこが面白いんだけど」

ポツリ独り言を溢し、私も教室へ戻った。

教室へ戻ると、窓際の一番後ろの席でさっき呼びに来た子と談笑しながらお弁当を食べてる霧島さんと一瞬目があったがすぐ逸れた。

何事もなかったかのように私も席に着いて、お母さんが作ってくれたお弁当を広げた。

「うわぁ~美味しそう!」

定番のハンバーグに卵焼き。きんぴらごぼう。

家庭的なお弁当でなんだかニンマリしてしまう。

自分は作る方だったから、朝と一緒で本当に新鮮だ。

「七瀬の弁当は相変わらず美味そうだな」

前の席の宗介が振り向いて羨ましそうにお弁当を見る。

「ね!美味しそうだよね~」

賛同しながら卵焼きをパクリと食べる。

「うん。美味しい!」

「だろうな。美味そうな顔してる」

「宗介も食べる?」

お弁当箱を宗介の前へ差し出すと遠慮もせずに最後の卵焼きを摘んで食べてしまう。

「そこは遠慮しろよ!」

「七瀬が食っていいって言ったんだろうが!」

「言ったけどもさ~。せめて数があるやつ食べなよ!」

「あ~悪い。でも、美味かった。ご馳走様」

バツが悪そうな宗介は何だか可愛く感じた。