玲のお父さんが運転する車は私が住んでいた町を通り過ぎ、さらに30キロ程走った所で住宅街へ入っていく。
「玲、起きてる?もう家に着くよ」
「うん」
車はバック音を鳴らしながらガレージへと収まった。
車を降りると表札が目に入る。
「…七瀬?」
16年間名乗ってきた苗字がそこには記されていた。
この子も七瀬なんだ…皮肉なもんだな。
家に目を向けると二階に明かりが灯っていた。
玲の両親はまだ外にいる。
兄妹がいるのかな?
私達の帰りを待っている人が居るのかもしれないと思うと自分の家族と重ねて胸が苦しくなった。
「ただいまー」
玲のお母さんは荷物を抱えながら家の中へと入って行く。
「どうした玲。中に入りなさい」
玲のお父さんに促され、七瀬玲として家の敷居を跨いだ。
