特にほっぺに違和感はない。

だけど、反射的に頬に触れた。

「凛。君の体はまだ生きてる。でも、想定外だよ君は」

男の子は再び鏡の中の私の肩に座った。

「い、生きてる?まだってどういう事?」

夢だと思ってる反面、目の前の出来事に背を向けられずにいた。

「凛。僕はルウク。こう見えて死神なんだ」

「…死神?」

手のひらに乗ってしまうほど小さい小人が死神?

「まだ、見習いだけどね」

「またまた~こんな可愛い死神いないよ!」

こんな状況にも関わらず笑みが溢れてしまった。

「死神って骸骨みたいな感じで大きなカマ持ってるやつでしょ?」

私が知ってるのはそんな風貌だ。

「はぁ~。だから人間ってやつは。君たちの想像力には頭が痛いよ」

ルウクは呆れ顔で首を振った。

「凛。君は今、玲の体に意識が入ってる。簡単に言えば入れ替わった。君の願いを叶えてあげたよ。君が玲を助けることは僕達にとって想定外の行動だった。何故なら玲はあそこでトラックに轢かれて即死するはずだったから」

可愛い顔してルウクは残酷なことをサラッと発する。

「で、でも、私もこの子もこうして生きてるじゃない?」

「うん生きてる。だから僕も困ってるんだ」

ルウクは困ったように眉を下げる。

「凛。君の体は長くは持たない。君の正義ある行動に免じて半年の猶予をあげる。その間、玲としてもう一度青春ってやつを謳歌するといいよ。半年後、君が玲のままが良ければ、僕は凛の体とその中にいる玲を連れて行くことになる。凛が自分の体に戻るのなら僕は凛そのものを連れて行くことになる。どうするかは自分次第だよ。どっちにしても、半年間は君の自由さ」

「え…それって、私が死ぬか、この子の人生を乗っ取るかって事?」

「乗っ取るか!いい言葉だね。まぁ、どっちが正解なんてないから。上手く玲として残りを楽しんでおいで!僕も楽しませてもらいたいし」

ニコッと笑うルウクに背筋がゾワッてなった。

見た目に反して中身は死神のようだ…