「凜、何お願いしたの?」
「まぁ…家内安全?」
渚と初参りに行ったのを思い出す。
私が願ったのは家内安全ではなかった。
「青春をやり直したいです。私を高校生に戻して下さい。」
真に出会う前に戻って、もっと自分の好きなことを沢山やっておきたかった。
ピュアな高校生で好きな人と制服デートしてみたり、行事に熱くなってみたり。
覚めた学生だった自分には出来なかった事が今になって悔やまれた。
あの時、あーしてれば良かった。
もっと自分を大切にしてたら…って歳を取るたび悔いが残る。
その思いが神様に届いたのだろうか…
「これは…喜劇だろうか…」
鏡に映る自分に問いかけた。
「喜劇じゃないよ。悲劇だよ」
「…っ!」
問いかけた鏡の中の私の肩に小さな男の子が座っていて、意味深にそう呟いた。
咄嗟に自分の肩に視線を落とす。
「あ、あれ?」
そこには何も居なかった。
「凛。僕はこちら側にしか存在しないから直接見ることも触れることも出来ないよ」
鏡の中の男の子は私の行動を見ながらクスリと笑った。
「ヤバイ。やっぱり頭打ってる。そもそもこの状況がオカシイわけで追い打ちをかけるように変な生き物まで見えるとか…もしかして、私…死んでるんじゃ?」
客観的に見ていた自分に目眩がする。
「変な生き物って失礼だな。自分で願っておいて、今の状態に不服なの?」
鏡の中の男の子は私の肩から立ち上がり私のほっぺをツンツンした。
