「凛、何お願いしたの?」
「まぁ…家内安全?」
「はぁ?ベタだねぇ~」
本当はそんな事、祈ってない。
イヤ…最後に慌てて付け足したと言うべきか。
「もう正月終わるって言うのに結構混んでるね。ランチ、ファミレスでいっか!」
「経済的にもその方が有難いわ」
1月5日。
今日この日は親友の柚崎渚〈ユズザキ ナギサ〉と初参りに神社に来ていた。
「渚は、何お願いしたの?」
「え~それは」
渚は含み笑いを覗かせる。
「早く、雅人さんが離婚出来ますようにってお願いした!」
そしてそれを切実に願うかのように目に輝きを持たせる。
「まだ、続いてたんだ…」
「何言ってんの?雅人さん以外考えられない!」
「…そっか」
渚は離婚と言う言葉で察しがつくように不倫をしている。
渚自身は独身だけど相手の雅人さんは既婚者。
イケナイ恋愛をしてるはずなのに、渚は常に堂々としていて、人を好きになるのに理由も肩書きも関係ないって言ってる。
私は渚が羨ましい。
自信を持ってこの人じゃないと考えられないってハッキリ言える渚が。