「何をどう勘違いしたらその答えになるんだよ。
自分の身体でしょ、わかんない?」

「わっ分かる訳ないでしょ!!し、したことないんだから!」

「いや、でも、さすがに初めてだったら分かるから」

「違和感ない子もいるって昔クラスメイトの女子が言っていた!」

「なんだそれ・・・とにかく、してないから」

「信じられるわけないでしょ!!」

「あーもー面倒くさいなー」

「何が面倒くさいよ!あたしには一生の問題よ!
寝てる間に見知らぬ男と初体験済ませたなんて!」

「いいか、はっきり言うけど、俺は処女には手を出さない」

「は!?」

「理由は、色々面倒臭いから。
遊ぶにしても、慣れた女の子のほうがやりやすいし、後腐れも無い。
だから、きみのこともそのつもりで誘ったの。
スタイルは良いし、社内一の文句なしの美人だし。
てっきり恋愛経験豊富だと思ったから、酒の勢いで意気投合して朝までってのもアリかと思って。
だけど、予想外に恋愛未経験で、しかも処女だなんて言うから。
いやー見事にその気を削がれたわ」

真っ向からあたしの出した結論をあっさりと否定された。

しかも、面倒臭いから?
処女馬鹿にすんなボケ!!

「な、によそれ・・・じゃあなんでホテルなんかっ」

「日本酒煽っていきなり倒れたきみを連れて、行く場所が無かったから。
住所まで知らないし。
俺の部屋に連れて帰るとさらに面倒くさい事になるから。
ちなみにホテルに着いたところで目を覚ました仁科さんは、
自分の足で歩いてバスルームに行ってシャワー浴びたんだけど、覚えてない?」

「・・・嘘でしょ・・」

「ほんとだって。しっかりした足取りで、風呂入るって言うから
放置してもいいかと思ったけど。
何と無く心配で残ってたら、案の定バスルームで物凄い音がして、
飛び込んでみたら、バスタブで転んで動けなくなってるし」

「ええっ・・」

「仕方ないからバスローブ着せてベッドまで連れてった。
そのままぐっすりだったから、俺は置手紙して帰ったんだけど」

「置手紙・・?」

「わざわざ枕元に置いといたのに、見て無い?」

「・・・ハイ」

「もーほんっとに、救いようないね、仁科さん」

至極楽しそうに微笑んで、痛烈な一言を口にした後で、柿谷さんはついでのように言った。

「まだ誰も手を付けて無い、綺麗な体見せて貰ったから
ホテル代は俺が奢ってやるよ」

もう恥ずかしさと、情けなさであたしは何も言えなかった。