「可愛い子ぶるもくそもあるか!
冗談じゃないわよ!
なんであんたみたいなチャラ男と寝なきゃなんないわけ!?
あたしはっ!
一生誰とも寝ないっ!」

「一生って・・・たかが失恋で大げさな」

呆れた顔で柿谷さんが、呟く。

「大げさじゃない!あたしには一生一度の恋よ!」

自分で言って恥ずかしくなるが、事実なのだからしょうがない。

彼になら、キスもエッチもきっと嬉しいと思えた筈だから。

「じゃあ何、仁科さんは、篤樹以外の男とは寝ないつもりだったの?」

あり得ないだろ、それは。と彼は言った。

その心底馬鹿にした彼の表情が許せなくて、あたしは完全に開き直った。

「悪い!?そのつもりだったわよ!!
初キスも、初エッチも、恋愛の全部を、南野さんとするつもりだったの!!」

ぎゃあああああ!!言っちゃった!!!

啖呵切った後で、転がりたい位恥ずかしくなる。

どこまで乙女だよ自分!!!

居た堪れなさをどうにかしたくて、ビールと一緒に届けて貰った日本酒をグラスに注ぐ。

何も考えずに一気に煽った。

ぷはーっ!と飲み切って、グラスを勢いよくテーブルに戻す。
と、目の前で柿谷さんが、呆然と呟いた。

「恋愛経験ゼロ・・・って事は処女・・?」

しかも無遠慮にあたしを指さして。

「それがどうした!!」

大声で言い返すと同時に、顔がどうしよもなく熱くなる。

胸と、首と後ろ頭が異様に熱い。

心なしか天井が揺れている。

それだけじゃなくて、目の前の柿谷さんも揺れている。

え、忍者、分身術?

とんでもなく間抜けな疑問が浮かんだ次の瞬間。

あたしの意識はぶっ飛んだ。