自分の恋が上手く行ったからって、振った相手の事を言いふらすような最低男じゃなかった。

その事実だけで、十分だ。

あたしは彼の面影を抱いて生きていける。

あたしの中できちんと気持ちの整理は出来た。

ここに長居する理由はもうひとつもない。

花束に罪はないので、遠慮なく頂いて帰る事にして、あたしは椅子から立ち上がる。

と、横から伸びて来た彼の手に、腕を掴まれた。

「なーに帰ろうとしてんだ?」

「帰りますよ、用事無いですもん」

「あるでしょ?俺と仲良くなるっていう重大な用事が」

「ありません」

「なんで、俺のどこが不満?」

「興味がありません」

「強がってもムーダ。意地張るのやめなさい、お兄さん聞いてあげるから」

「結構です!」

「失恋したときは、次の恋をするのが一番だよ?
俺、今ちょうどフリーだし、きみみたいな美人さんならいつでも大歓迎だし」

にっこり笑って言われても、ちっとも胸に響かない。
あたしは盛大に溜息を吐いた