「地獄だよ! そもそも世の中にはすでに完璧な譜面が溢れてるのに新しいフレーズなんて思いつかないもん」 「そうねぇ」 お母さんは言いながら立ち上がり部屋の隅に置かれているピアノへと向かう。 「もう夜だけど、少しなら許されるかしらね」 ゆったりとした手つきで鍵盤蓋を持ち上げる。 それから中のキーカバーを外して私に渡す。 それを受け取るとお母さんはピアノに向き合って鍵盤に柔らかく指を添え……。 〜〜〜。 私の知らない旋律を奏でた。