「新田くん……」 意味が分からず名前を呼ぶ。 新田くんは「大丈夫」と微笑みかけてくる。 「一緒に弾こう」 そう言って譜面立てを見ている。 そこにはピアノ奏者なら一度は弾いたことのあるベートーベンの『エリーゼのために』の譜面が置かれていた。 「いくよ」 小さく聞こえた新田くんの声に、私は慌てて鍵盤に指を置く。 それから新田くんと私の連弾が始まった。