私は無言のまま目を瞬かせる。 「三咲、呼んでるよ」 何故か楓は私に声をかけてくる。 イヤイヤイヤ。 流石に三咲違いだろう。 そうは思うのに新田くんの視線は私を捕らえて離さない。 登場しない『三咲』の存在にホールの中が少しずつざわめき立つ。 「行こう」 新田くんは私をその目に捕らえたまま舞台から私を迎えにきた。 気づけば、私は意味のわからないままピアノの前に座っていた。