「今日は帰ろうか」 新田くんはカバンを肩にかけて立ち上がる。 「待って!」 「ふふ。今日はよく待てをさせるね?」 「あの!明日!演奏会が終わった後に会うことはできますか?」 「ん?改まってどうしたの?」 「もう何も分からずに待つのは嫌なの。 私たちはいままできちんとした約束を交わしてこなかったでしょ? だから、次からはきちんと約束を、言葉を交わそうって決めてたの」 「なるほどね」 そう言って、新田くんは私の耳元で小さく囁いた。