「今日は歌もピアノも無しにしようか」 待ちきれなくなったのか、先に言葉を発したのは新田くんだった。 「え?」 「ほら。もう明日は演奏会でしょ? 三咲の演奏を聴くのはそれまで待とうかなって。 それに僕はもうお昼に歌ったから、まあ、満足だし。 それにほら。待ての間にこんな時間になってしまった」 新田くんを真似て時計を見る。 時刻は七時。 いつもなら八時までは使えるこの部屋も、演奏会を控えた今日はもうおしまいの時間だ。