あなたが居なくなった日。


「実はね?

中学生だった頃、僕はプロの奏者にはなりたくないって、一回だけ両親に言ったことがあるんだ。

めちゃくちゃ怒られた。二人とも猛反対。

まあ僕も、だからって何か他の道も見えなかったしその時は謝って終わったんだけどね。

そんな時にちょうどこの学校の演奏会に来たんだ。

でもそこで演奏している人たちも、見に来ている人でさえみんながみんな楽しそうでさ。

居たたまれなくなってホールを抜け出した。

でも聴きに来た手前まだ家に帰るには早いしどうしようって、フラフラ歩いてたら裏に良さげなベンチを見つけてさ。

そこに座って時間をやり過ごすことにした。

最初はぼうっとしているだけだった。

だけどホールから微かに聴こえてくる音色に、気づいたら旋律を口ずさんでた」