私が遅くなったのには理由がある。 通学路で新田くんの姿を探したのだ。 いままで登校ですれ違ったこともないし、そもそも新田くんの通る道だって把握している訳じゃないけど、それでもついキョロキョロとその姿を探していた。 そのせいで歩調はノロノロ。 信号ではより多くそこに留まっていられるようわざと一回見逃したりもした。 「今日は降りそうだね」 「そうだね」 私たちは同時に窓の外を見る。 空には大きな雲が蓋のように覆い被さっている。