新田くんは腑に落ちないのか少し難しい顔をする。
「新田くん?」
そっと呼びかけると彼はハッとしたように表情を変える。
「ああ、うん。じゃあやっぱりこの中から選ぼう。
この中で三咲ちゃんのお気に入りはある?」
「それを聞いてどうするの?」
「え?その曲を演奏会の楽曲にする」
新田くんはいたって真面目な顔で断言する。
「あのね?だったら今日っていらなくない?
そうなると私がお気に入りの譜面を学校で渡せば済む話だったでしょ?
ちゃんと考えて選ぼうよ。
学校の演奏会なんて新田くんにとっては舞台が小さすぎてやる気も起きないかもしれないけど、そう言うのってちゃんと取り組んだ方がいいと思う」


