いままであまり意識をした事はなかったけど並ぶ譜面がそれを物語っている。 対するお母さんが選んだものはゆったりしっとりしたものが好きみたいだ。 (その中で“楽しき農夫”だけが特別軽快な曲で、だからこそ小さかった私は惹かれたのかもしれない) 「三咲ちゃんちでは三咲ちゃんの他に誰がピアノを弾くの?」 「お母さんが」 「そっかぁ」 言いながら、新田くんは器用に私が自ら選んだ譜面だけを手に取ってゆく。 「新田くんもそう言う系統の曲が好きなんだね」 思わぬ好みの一致に声をかける。