あなたが居なくなった日。


「味なんて分かんないよー」

 そう。

 チョコの甘さですらいまの私を落ち着かせることはできない。

「まじか!じゃあ三咲の分も私が食べる!」

「それはダメ!」

 大好物の甘いものを取り上げられそうになって慌てて深呼吸を繰り返し、改めて一口。

「……甘い」

「んね。甘くておいしい」

 甘いものを考え付いた人は天才だと思う。

 こんな状況でもひとたびその味を認識すればほっと胸が落ち着く気がする。